『Shall we ダンス?』レビュー

     第三十二回目のレビューは『Shall we ダンス?』(周防正行、1996年、136分)についてです。「社交ダンス」を題材にした非常に素晴らしい映画となっています。日本ではまあ話に聞かないこのマイナーな題材を扱いながら、ここまで素敵なストーリーに仕上げることができるというのは、驚くべき才能です。
     主演は役所広司。この翌年にずっと前に紹介した『うなぎ』に出演します。この二作で役所広司をすごい好きになりました。

     ストーリーは以下。
     仕事ではボタン会社の経理課課長にまで出世し、家庭では優しくて可愛らしい妻(原日出子)と一人娘(仲村綾乃)に恵まれ、最近念願の庭付き一戸建てをローンで購入した杉山正平(役所広司)は、日々の生活にどこか満ち足りなさを感じていた。彼は会社の帰り、電車から見えるダンス教室の窓を開けて物憂げにたたずんでいる女性=岸川舞(草刈民代)に目を奪われ、帰る度に彼女の姿を探すようになる。とうとうダンス教室の扉を叩き、社交ダンスを習い始める杉山であったが、目当ての舞からではなく、ベテランのたま子先生(草村礼子)から、初心者三人組として指導を受けることになる。当ては外れたものの、同じ初心者仲間や、プライドが高く恰幅のよい高橋豊子(渡辺えり子)、会社の同僚で五年前から社交ダンスを始めた青木富夫(竹中直人)といった個性的な人びとに交じってダンスを続けるうちに、ダンスの楽しさに眼ざめた杉山。しかし、それを知らない妻は、急に生活が変わった夫を心配して、浮気調査の探偵(柄本明)を雇うのだった。――

     観ていて自然と笑みがこぼれるというか、やさしい気持ちになるというか、そんな映画です。社交ダンス仲間や杉山のことばかりにフォーカスするのじゃなく、妻や娘のこともしっかりとストーリーに織り込んでいるのがすごいです。要素はいっぱいですが、あくまでミニマムに、しかししっかりと描写しています。映画を通してみなが少しだけ成長し、男として、女として、人として素敵になっていく、それを見届けた時、静かな感動に満たされます。
     主役は役所広司と草刈民代なのですが、二人が男と女の関係になるわけでなく、あくまでダンスを通じて友情を培っていくのがとてもいいですね。さて、役所広司は控えめな役どころで、草刈民代も出ずっぱりというわけではありません(演技もそんなに上手くないです)。地味な主役二人を支えるのが個性的な脇役たち。竹中直人や渡辺えり子はさすがの演技。ほかにも柄本明だったり、ダンサーたちだったりがよい演技ですが、特に印象深かったのは杉山の妻を演じた原日出子とたま子先生を演じた草村礼子でした。この二人の役は本作における癒し。夫を愛しているからこそ、ダンスを始めたことにどこか嫉妬する妻。ステップだけでなくダンスそのものに大切なことを教えてくれる先生。この二人が出てくるとついほほ笑んでしまいました。二人ともおばさんなんですが、どこか可愛らしい感じです。ダンスホールでたま子先生と踊る役所広司の楽しそうな顔がよかったなあ。「杉山さん、ダンスはステップじゃないわ。音楽を身体で感じて、楽しく踊ればそれでいいの」、「ダンスはまず、お互いの気持ちなんだから」。
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    筑波大学 映画研究部

    映研は、筑波文サ連に所属し、東京教育大学時代から続く長い歴史と伝統を兼ね備えた部です。
    映画作品はもちろん、業界、エンターテインメント全般に関する知見を深め、コンテンツを愛し、楽しみ、味わいます。さらに、年2回レビュー雑誌「カチンコ」を発行し、内外に映画の魅力を発信しています。

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